♪チャラッチャッチャ~チャチャ~ララ~チャ~ラ~チャ~ララ~ラ~♪
今日は、奈良県のトイレをご紹介します
♪チャラッチャッチャ~チャチャ~ララ~チャ~ラ~チャ~♪
– この企画は“SAORIGRAPH”の提供でお送りします –
皆さんこんにちは。あたかもあのご長寿ミニ紀行番組かのような始まり方をしたこの企画ですが、今回が記念すべき第1回目なんです。知ってました?
なんでしょう。歳を重ねるごとに、人間性がうざったくなります。
さっさと世界各地のトイレ紹介に入りたいのですが、『いきなりなんで世界のトイレ紹介?』と脳みそコンフュージョンだと思うので、簡単に企画の趣旨をご説明させていただきます。
「あーこの国はこういうタイプね!」「あ、ここ日本のメーカー使ってる!」という具合で、便器などの写真を撮っています(なるべく汚物がついていないやつ)。
写真を撮っているだけではもったいない。せっかくなので、旅先で出会った水回り住設機器の紹介と共に、その国のアレコレや、トイレにまつわる小ネタやらを綴っていこうというのが、この企画です。
では記念すべき1回目は母国・日本から!奈良県にある『奈良ホテル』にまつわるトイレネタをご紹介します。
日本のトイレの歴史
突然ですが、皆さんの家は水洗トイレですか?
今はほとんどの家が水洗式トイレだと思いますが、25年くらい前までわたくしの実家の集落は、ほとんどが汲み取り式トイレ(簡易水洗式トイレ)でした。さらに農家だった祖母の家は堆肥を兼ねた汲み取り式トイレ(落下式トイレ)が屋外にあり、夜中トイレへ行く時は「穴に落ちたら嫌だなぁ」とビクビクしながらトイレへ行ったものです。
さて、日本のトイレの歴史はどのような形で歩んできたのでしょうか?
縄文時代~
この頃は、川に直接用を足す「川屋」(厠の語源とされる)が一般的だったそう。
弥生時代の遺跡には下水道のような構造があり、「古事記」や「日本書紀」では厠で襲われる皇子の話があるので、既にある程度区切られたトイレとしての空間が存在していたと考えられる。
平安時代
貴族の間では「樋箱」と呼ばれる「おまる」が使われていた。庶民は一般的に野外で用を足していたそうよ。
鎌倉時代~江戸時代
排泄物を肥料として利用する為に、汲み取り式のトイレが普及。
明治時代~
1887年、英国製の水洗式トイレが日本で初めて設置された。1914年には国産初の腰掛水洗大便器が出荷され、浄化槽や下水道の整備が進行。1959年に公団住宅に採用されたことから、現在のような洋式便器が一般家庭に普及し始める。
現在
めちゃハイテク。
ざっくりとこんな感じですかね!日本のトイレの快適さや清潔さは他国と比較しても素晴らしいものだと思うので、今後も頑張ってほしいです(誰目線?)。
高浜虚子が驚いた「水洗トイレ」
明治時代から徐々に設置されはじめた水洗トイレ。ただ、一般家庭に普及したのは昭和35年以降なんです。
そんな洋式水洗トイレが珍しい時代に、初めて洋式水洗トイレに対面した人は一体どんな感想を持つのか。それが分かる資料が、奈良県のクラシックホテル「奈良ホテル」にありました。
こちらは大正5年(1916年)に書かれた、高浜虚子の「奈良ホテル」という滞在記。普段わたくしが書いている旅行記みたいな感じですかね!ちなみに高浜虚子の本名は高浜清(きよし)なのですが、正岡子規から「清(きよし)だから虚子(きょし)で」みたいな感じで名付けられたんだとか。
この「奈良ホテル」という記事は、当時国民新聞の社員として奈良ホテルを訪れた高浜虚子が、見るもの聞くもの全てに興味を持ち綴ったもの。その中でも特に、洋風バスとトイレに対面した時の虚子の表現は滑稽かつ秀逸で、わたくしも読んでいて思わずニヤニヤしてしまいました。
こちらの赤枠で囲ってある部分が、洋風水洗トイレについて高浜虚子が綴った部分です。(赤枠は奈良ホテルさんが分かり易いように付けてくれていました)
わたくしのお気に入りの部分を以下に抜粋しますね。
その便所の底には岩間にたゝへられてゐる水のやうな美しい清水が顔を見せてゐる。
マジですか…あの便器の水溜まり面を、そんな高尚な気持ちで見ていたんですか!虚子さんは!
現代の日本人で「岩間に満ちた清水のようだー!」という気持ちで便器の水を眺めたことのある人が、一体どれだけいますでしょうか?いないでしょ?どうせみんな、薄汚れた気持ちで便器見てるんじゃないの?(言い過ぎ)
白い泡が沸立つて前の清水とは趣を異にしたものになつたので、どうも此儘(このまま)放つて置くわけには行かなくなつた。
そんな清水の上に小便をするのを一瞬躊躇った虚子さん。それでも思い切って用を足してみた時の描写がこれです。用を足したことにより変わり果てた清水を見て、このまま放っておいてはダメだ!と危機感を持ったようです。
うん、その状態で放っておかれたら、わたくしならブチ切れますね。流せ!流すのだ虚子!
其紐を引くと烈しい音がして忽ち水は真鍮の管をつたうて、其便器の中にほとばしり出る(中略)又もとの如く便器の底には無色透明の清水がたゝへられてゐる。
そして頭上の箱から垂れ下がっている紐を引っ張り、水を流した時の描写。さすが俳句界の巨匠、便器を流れる水を「ほとばしり出る」だなんて、最高に粋な表現をするじゃないですか!
わたくしも今後、自社便器をお客様に紹介する時、
弊社の便器は、この部分から清水がほとばしり出ます!
とか言ってみようかな。なんだか“やんごとなき便器”感、出ません?
辻小便でも決して事を缺かさない自分の小便が、かゝる贅澤なる仕掛けのもとに取扱はれることを不思議なやうに思ひながら暫く其装置を眺めてゐた。
「自分の大したことない小便が、こんなにも贅沢に取り扱われるだなんて…!」と不思議に思いつつ、しばらく便器を眺めていた虚子さん。いいですね、その反応。こちらとしても「してやった感」があります。
このように今では当たり前になっている洋式水洗トイレは、当時なかなか衝撃的なものだったということが、高浜虚子の「奈良ホテル」から感じることが出来ました。「奈良ホテル」は全9回の連載物です。全部読みたい!という方は奈良ホテルへどうぞ。
日本のクラシックホテル「奈良ホテル」とは?
いきなりトイレについて語ってしまいましたが、ここで「奈良ホテル」の簡単なご紹介を。
日本には「日本クラシックホテルの会」という会があります。第二次世界大戦以前に建てられたホテルで、その建物を維持(改修、復元含む)、文化財や産業遺産などの認定を受けているなどの条件を満たしたホテルで結成されており、全国で9つのホテルが加盟しています。
日光金谷ホテル(栃木)、富士屋ホテル(神奈川)、万平ホテル(軽井沢)、奈良ホテル(奈良)、東京ステーションホテル(東京)、ホテルニューグランド(横浜)、蒲郡クラシックホテル(愛知)、雲仙観光ホテル(長崎)、川奈ホテル(静岡)ですね。
奈良ホテルは1909年に「関西の迎賓館」として創業。本館は建築家・辰野金吾氏による設計です。
エントランスに足を踏み入れた瞬間、まるでタイムスリップしたかのような感覚に陥ります。優雅で気品溢れる建物は、映画の世界に入り込んだみたい!
もっといい洋服来てくれば良かったな(持ってないけど)
奈良ホテルには「本館」と「新館」があり、本館は1909年に建てられたもの(最近耐震補強工事が完了したようです)。新館は1984年に建築されたものです。
運良く「本館」に宿泊できたのですが、この客室の窓が素敵でした!木枠の上げ下げ窓なんて、初めて見たと思う。客室内の天井高は恐らく3m以上あり、こじんまりとした部屋でも圧迫感を感じませんでした。
せっかく泊まるなら、ぜひ「本館」を狙ってみて下さい。
こちらはロビー「桜の間」。写真に写っている大時計は「平成の大時計」と言って、上皇両陛下の即位を祝して置かれたものだそう。15分毎に素敵なメロディーが流れます。
さらに。こちらのピアノはなんと、アインシュタイン博士が弾いたピアノなんです。
え!?あのアインシュタイン!?
1922年に奈良ホテルに2泊したアインシュタイン博士が弾いたもので、当時の写真がピアノの上に飾られています。実はこのピアノ、長らく所在不明でした(戦後GHQに接収される前に、急いでピアノをホテルから運び出したらしい)が、交通科学博物館(今はもう無い)に保管されていたものを発見。そしてこの写真が決め手となって、奈良ホテルに戻ってきたそうよ。おかえり!
アインシュタインのみならず、オードリーヘップバーンやダライ・ラマ14世、堀辰雄や司馬遼太郎など多くの著名人が奈良ホテルには宿泊しています。
これだけでもお腹いっぱいな奈良ホテルですが、ティーラウンジやバーもすっごく素敵なんですよ。もう困る。この記事、5,000字行ってしまうではないか。(本当は3,000字以内に納めたい)
夜のバータイムも、昼のティータイムも両方とも利用しましたよ。ええ。奮発ですよ!スイーツ食べまくりですよ。夜はムーディーな感じ、昼間は大きな窓から古都の景観が楽しめます。
ティーラウンジでは紅茶がおすすめらしい。こだわりの最高級紅茶です。宿泊せずとも、ラウンジだけ利用に訪れるのも可能です。
現在の奈良ホテルの客室トイレ
奈良ホテルの魅力を伝えるには文字数が足りないので、別記事で改めて書きたいと思いつつ。
最後に高浜虚子が驚いた奈良ホテルの洋式水洗トイレが、現在はどんな感じになっているかご紹介しましょう。もちろん現在の客室トイレは、その当時のものとは違います。さすがに水回りは改修しているよね。
現在の客室にはこちら。TOTOのホテル向けウォシュレット一体型便器が付いていました。かなり新しい機種ですね。一見タンクレスに見えますが、これはタンク式のトイレ。大洗浄4.8ℓ、小洗浄3.8ℓの節水型です。
ホテル向けウォシュレットは、同じ空間内にバスとトイレを設置する時に使われます。詳細は知りませんが(←おい)、防湿など色々と必要な処理がされたりパブリック向けの機能があるんでしょうな。
こちらにはTOTOのオンリーワン技術である『きれい除菌水』でウォシュレットのノズル部分を洗浄する、という機能が付いています。
ついでに洗面台も見ましょう。
洗面ボウルはDURAVIT(デュラビット社)のもの、水栓金具はTOTOです。
DURAVITは1817年にドイツで創業した、デザイナーズバスルーム製品のリーディングカンパニー。世界130ヶ国以上で発売されている、超有名メーカーです。世界で初めて著名デザイナーをバスルーム製品のデザインに起用、1994年からはフィリップ・スタルクがデザインを手掛けるシリーズも出ています。
フィリップ・スタルクって、透明の椅子(Louis Ghost)で初めて知った記憶がある。
バスタブはメーカー見るの忘れました。このNARA HOTELと書かれた足ふきマットは、ふわふわしていて気持ち良かったような気がします。
浴室用の水栓金具とシャワーヘッドはTOTOのものでした。シャワーヘッドはエアインシャワーという節水タイプのもの。わたくしの家も、これのデザイン違いを使っています。
と、憧れのクラシックホテル「奈良ホテル」の、現在の客室水回り機器はこんな感じでした。
次回も地球上のどこかのトイレをご紹介します。お楽しみに!
(次回がいつになるかは未定)
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